チタン鉄鉱 ilmenite FeTiO3  六方晶系  [戻る
赤鉄鉱の2Fe3+ → Fe2+・Ti4+置換体

コランダムや赤鉄鉱と同構造。光を透さず,反射偏光顕微鏡で観察する必要がある。


反射偏光顕微鏡での性質)

形態/他形粒状のことが多い。自形は6角板状で,その断面が短冊状に見えることもある。

反射色/褐灰〜灰褐色

反射多色性/明瞭(褐灰色〜灰褐色)

異方性/強い

反射率(λ=590nm)/約20%

ビッカース硬度(kgf/mm2)/500〜800程度(Mgの多いものは硬い)。硬度が高く,平滑な研磨面を得るには時間がかかる。
内部反射/普通は認められないが,時に認められる(Mg富むものは暗褐色, Mnに富むものは真紅)。

産状

火成岩や変成岩に副成分鉱物として磁鉄鉱・赤鉄鉱などとともによく見られる。

火成岩では,火山岩よりも深成岩に少量ながら広く見られ,特に閃緑岩〜はんれい岩に多い(かんらん岩・蛇紋岩にはあまり見られない)。カナダなど大陸地域の苦鉄質深成岩体中の正マグマ鉱床からは層状で多産し,それは重要なチタン資源である。なお,特に酸化的な条件でできた火山岩ではチタン鉄鉱は全く生成されず,代わりにルチル+赤鉄鉱の組合せやシュードブルッカイト(Fe2TiO5)が形成される。

変成岩では片麻岩にしばしば見られ,チタン鉄鉱と同じく還元環境で形成されるアルマンディンや石墨を伴う場合も多い。また,苦鉄質岩起源の結晶片岩(緑色片岩・角閃石片岩など)には頻繁に出現し,500〜600℃の変成条件からの温度低下での赤鉄鉱との離溶ラメラ組織を形成しているものも多い。一方,泥質片岩・ケイ質片岩・紅れん石片岩などの堆積岩起源の結晶片岩には少なく,これらは源岩がもともとTiに乏しいためである。

Fe⇔Mg・Mnの部分的な組成変化がある。なお,MgTiO3のものはゲーキアイト,MnTiO3のものはパイロファナイトという。ゲーキアイトはキンバレー岩やまれにドロマイトスカルンに産し,褐色の内部反射が見られる。パイロファナイトは接触変成作用を受けたマンガン鉱床にバラ輝石などに伴い,深紅の内部反射が見られる。

・時に割れ目や周囲が微粒のルチルやアナターゼなどのTiO2組成の鉱物やくさび石に変質していることもある。






角閃石片岩に含まれる赤鉄鉱(Hm:明灰)中のチタン鉄鉱(暗灰)の離溶組織 愛媛県肉淵/平行ニコル

約500℃でできた三波川変成帯の角閃石片岩中のもの。視野の中央〜右を占める赤鉄鉱中に,細かい紐状に見えるチタン鉄鉱のやや暗色の離溶ラメラが無数にある((0001)の1方向に並ぶ)。
一方,視野の左や上にある離溶ラメラではない大きなチタン鉄鉱(Im)には赤鉄鉱の離溶ラメラを含んでおらず,この生成温度ではチタン鉄鉱にはFe3+が固溶しなかったことがわかる。
このことから赤鉄鉱(Fe2O3)−チタン鉄鉱(FeTiO3)の固溶系列には非対称ソルバスが存在することが考えられる。